法律と雑記帳

 法律とその他自分の出来事を書いていきます。

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大人たちは心を 捨てろ捨てろというが 俺は嫌なのさ~♪

 職場ではよく「お前は自分勝手だな!会社に雇われているんだぞ!」とか「誰が給料出してると思ってるんだ!」とか言われると思いますが、私からすれば「あんた何様なの?」と言いたいです。どう考えても僕ら労働者をいいように使いたいだけにしか聞こえないし、自分がえらいと思い込んでいるのが最大の原因でしょう。

 何を言っているんだ、会社のやり方が絶対だ!会社のおかげで俺は食っていけるんだ!という人は、以下の記事を見てほしいです。

 米国でトヨタ車がいくら売れようが、知ったことではない。日本国民の利益になり、日本国民が恩恵に与るのなら誇るべき日本企業だろう。

 しかし海外で生産して海外で売るだけならまだしも、日本へ逆輸入する企業まで現れるとは以ての外だ。トヨタの逆輸入車は寡聞にして聞かないが、他の自動車メーカーでは耳にする。

(略)


 トヨタは米国で投資するよりも、日本に回帰すべきだ。米国で生産していては新規技術開発や研究開発は覚束ない。日本国民の勤勉さと企業への忠誠心がトヨタを世界的な企業に育て上げたことを忘れてはならない。豊田一族だけで成し遂げたものではないことを肝に銘じて、日本国内に回帰すべきだ。


日々雑感


 このことから、逆の主張も言えます。つまり「僕たち労働者がいなかったらここの会社は成り立たないんじゃないですか?」とか「僕たち労働者が稼いだお金で、会社の経営者は食べていってるんじゃないですか?」という主張です。ですが、この主張はなかなか聞こえてきません。なぜでしょうか。

 ここで、「滅私奉公 pdf」と検索してみたら、面白い論文を発見いたしました。
ブラック企業問題と日本的雇用システム - 立命館大学経済学部 論文検索

 本論文で問題にしているのは「なぜ学生たちは日本の雇用に関して誤った考えを持っているのか?」ということです。本論文の著者、伊藤は学生に対し「日本的経営の三種の神器は何か?」とテストで質問してみたところ、多くの学生から以下のような回答が返ってきたといいます。

犯罪でも起こさない限り解雇にならず,仕事を頑張っても頑張らなくても給料は変わらない年功賃金のために日本企業はだめになった。だから,能力のない従業員や公務員を解雇して,頑張った者が報われる成果主義を導入しよう(伊藤2014:119)
 著者がどのような授業をしているのかわからないが、少なくとも学生は企業に対してこのような印象がある、といえるでしょう。学生たちは現在の労働環境を劣悪とは認識せず、むしろ成果主義を助長するような考えをもっている。さらに伊藤は、テレビの評論家やコメンテーターまで、上のような見解を持っていることから、多くの人々の理解にもつながっているとも述べている。

 一般の人たちが日本の雇用制度に対して、ちゃんとした理解をしていないために、会社の命令を絶対と考える経営者がはびこってしまうのではないでしょうか。なぜなら、日本の雇用制度を把握することによって、長所と短所を分析することができ、改善につながる余地があるからです。次回に続く。

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追記 2017/01/14
一部文章書き換え

 社会人1年目の私は、ある上司の言葉から強い疑問を持ちました。「上司の言うことは絶対だよ」本当かよ・・・?法的根拠とかあるのか?理不尽な命令でも絶対に従わなければならないのか?と疑問が付きません。

 さて、前述の上司や会社の命令は絶対なのか?という命題は是か非か。今回は解雇権という視点から探ります。参考文献は水野勇一郎著『労働法入門』岩波新書から。

労働契約法第16条
 まず水野は労働契約法16条を紹介します。すなわち、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」(有斐閣ポケット六法2015年、1708頁)というものです。

 客観的な合理的理由とは?水野によれば以下のようになります

「ⓐ労働者の能力や適格性が低下したこと(例えば、労働者が私的な事故により働くことが難しい状況になったこと)、ⓑ労働者が職場の規律を乱す悪い行為をしたこと(例えば、労働者が度重なる遅刻や早退で企業秩序を乱したこと)、🄫経営上の必要性(例えば、経営難で人員整理もやむを得ないこと)という3つのタイプのものがある」53


 まとめると
 1.労働者の能力の低下
 2.労働者が職場の規律を乱した
 3.経営上の必要性(そのまんま・・・)

 ということになります。

判例の紹介
その上で水野は判例3つを紹介しています。(53-54頁)

 1.ニュースのアナウンサーの事例で、朝6時のラジオニュースの担当をしていたにもかかわらず、二週間に二度寝過ごして放送事故をおこし、しかも二度目の事故について上司に報告せず、事実と異なる報告書を提出した。裁判所は、この労働者のみを責めるのは酷であり、普段の勤務成績態度は悪くないし、二度目の事故について謝罪の意を表明しているものとみて、解雇にするには社会的相当なものではないとした。


 2.タクシーの運転手が、視力低下のため二種免許を喪失し、それに伴い解雇されたことについて争われた。裁判所は、能力低下ⓐは認めるものの、運転手以外の仕事をこの労働者に提供することは困難ではないとし、資格喪失のみをもって解雇することはできないとした

 3.経営悪化した会社が再生手続きを申請し、紡績部門を閉鎖することに伴い労働者105名を解雇した事例。裁判所は紡績部門を継続したら将来破たんに陥ることが避けられないという事情は立証されておらず、解雇の回避に努めていたともいえず、解雇前の労働組合の説明も不十分であり、解雇権の濫用として解雇を無効にした



 判例を全文読んだわけではないのですが、ニュースの放送事故がどの程度の損害をだしたかが気になりますし、事実と異なる報告書を提出したのにも関わらず、裁判所は労働者側に寄り添った判決をだしております。会社側は納得しないでしょうねw

 さて、上述の事例から水野は次のように分析します

 裁判所が個別の事案のなかで解雇の社会的相当性をかなり厳しく求めている点、そして、解雇が権利濫用とされた場合の法的救済の内容が解雇無効と賃金支払いという重いものとされている点に日本の解雇権濫用法理の大きな特徴がある55


 以上のことから、裁判所は会社側の解雇権に対し、労働者側に寄り添った判決を出しているといえます。上司の命令は絶対なのか?という命題は上の3つの事例から、絶対ではない、と言えるでしょう。なぜなら遅刻したアナウンサーや視力が低下したタクシーの運転手の主張を認めていますからね。
 ちなみに社会相当性とは何だろう?今になって思った疑問ですが、これは別の機会に調べてみようと思います。

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